2019.12.18
笑う田舎暮らしには福来たる、といいな。
近所に住む小学4年生の彼は、学校に通えない。電磁波や化学物質に弱いから、学校に行くと具合が悪くなるのだ。その代わり、毎日、自転車で近所の広場に行き、宿題をやったり、小さな子供の面倒を見たりして過ごしている。
その行き帰りに、まめやに寄ってくれる。工場の重い扉を開けて「おはよー!」と元気に挨拶してくれる。そして、日が沈む頃「また明日ねー!」と声をかけて家に帰っていく。毎日、子供らしい屈託のない笑顔を見せてくれる彼に、私は癒されている。
時には、まめやの店で一服。私の描いたマンガ本を手にとり、クスクス笑ってる。本当に、無邪気なのだ、彼は。
先週、マンガ本を増刷して「販売用」として並べておいた。それを目ざとく見つけた彼は、「これ、買えるの?!やったー!!」と言って、その日は帰っていった。
翌日、小さな手に、小さなガマぐちのお財布を握りしめ、「マンガ本下さい!」と、
なけなしの小遣い500円をお財布からチャリンと出してくれた。
彼は、電磁波過敏症とか化学物質過敏症とか一般的に言われるものを患っているけれど、それは全然特別なものじゃない。普通にその辺で遊んでる普通の子供が、なるものなのだ。そのことに気づかされた彼のまわりの大人たちが、なんとかしなければと彼のため、子供らの未来のため苦慮するが、5Gやスマート革命に象徴されるような世の中の大きな流れに抗うことはとても難しい。
新しいマンガ本を大事に抱え、チャリンコをこいで帰っていく後ろ姿を見送りながら、もしかしたら彼は、新しい印刷物の匂いやインクで、頭が痛くなるのかもしれないと思った。でも、彼はそれを承知の上で、私の新しいマンガ本を買ってくれたんだ。そう思うと、胸が熱くなるとともに、ぎゅっと痛むのである。
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