2019.11.29
油揚げを揚げる朝
今朝は、油揚げを臨時で揚げることになった。
油の中に生地を入れると、じゅわじゅわーっと音がした。
あれ?いつもはこんなに大きな音はしないぞ?と思ったら、そうか、今日は他の音がしないからなんだと気づいた。普段は、夫が隣で豆腐を作っているので、豆をつぶす音や、炊く音や、夫の動き回る音などが、工場内で響いている。今日は、私一人。だから、工場の中は静けさが漂っているんだ。
じゅわー、ぶくぶく、ぷつぷつ、じゅじゅー
油の中に沈んでいた生地が浮き上がってくるとともに、寝ていた生き物が起き出すような音がたってくる。ワクワクする。壊れた扇風機のようにブンブン鳴り響く換気扇も、今日は付けずに、その音にじっと耳をすませていた。
クライマックスは、生地を高温にうつしたとき。
ジュオーーーー!!
生地の細胞一つ一つが火傷してびっくりして弾け飛ぶような音。これはいつも聴こえる音なんだけれど、拡声器を使って音を大きくしたみたいに、頭にガツンと響く。うん、いい音だ。いい調子だ。よくふくらんでいる証拠だ。
足元では、燃え盛る薪が、バチッバチバチ、と言っている。
換気扇を付けないから、煙が目にしみる。のも、また良い。
そして、静かに、物言わぬ油揚げとなり、佇む。
でも、「今日の僕ら、サイコーにうまいぞ!」と、油揚げの心の声が、私にだけ聴こえてくる。
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